資料提供/GGN、グラングリーン大阪開発事業者
ランドスケープデザインの考え方
GGN のランドスケープデザイン思想として、大事にしていることはたくさんあるのですが、うめきた2期のデザインに深く関連するのは以下の8項目が挙げられます。
1, 本物(AUTHENTIC)な場所をつくるため、ソウル(魂)とも言える土地の本質を読み解きデザインに反映させていくこと
2, 別の土地のコピーではなく、その土地の歴史・文化、マテリアルや職人の技などを尊重し、デザインに生かしていくこと
3, 物珍しさや流行りすたりのあるトレンドではなく、長く愛される、その場所ならではのtimeless なデザインをつくり出すこと
4, 敷地のみにフォーカスするのではなく、街や周辺地域などとの関係性の中で大きな枠組みをデザインしていくこと
5, 公共空間において多様な人々の多様なニーズに対応できる空間デザインを重視すること
6, 人が実際感じとれる詳細やシークエンスなどの体験を丁寧にデザインすること
7, 生物多様性やグリーンインフラの推進
8, 全ての関連分野やステークホルダーとお互いの専門知識やスキルを尊重し合いながら協働すること
大阪という土地、またうめきたという場所の第一印象について
一番最初にGoogleEarth の航空写真でサイトを確認した時、高密度な街の中に緑が非常に少ないというのが第一印象で、うめきた2期の敷地全体が大きな緑に感じられる事が大阪にとって価値ある事になると思いました。
2 期の敷地には商業、住宅棟、コンベンションセンター、オフィス、ホテル、公園やその中にミュージアムなど、多様な用途の建物や敷地が存在します。それぞれが単体で際立ってしまうと「一つのまとまった大きな緑」として感じられなくなるので、ランドスケープが全てを包括するベースになることが非常に大切だと考えました。
「土地を一皮めくると、潤った大地があり、それが敷地全体の基盤となっている」というランドスケープストーリーを提案し、そのコンセプトを元に、建築チームとも協働し、まずは2 期全体をまとめるように努力しました。ひとつの大地にタワーなどの建築が⽣まれ育ってきて、公園のキューブと呼ばれるパビリオン群がタワーからこぼれ落ちた感覚で存在するなど、数社にわたる建築オフィスを含めて全員でコンセプトを発展させていきました。
各ゾーンをそれぞれのアイデンティティや雰囲気、敷地を歩いた時の移り変わりのシークエンスも考えながらデザインしているからこそ、ランドスケープが⼀つの地盤として存在することがより⼤切になっていると言えます。うめきたの敷地は南東に西日本最大級の大阪駅とグランフロント大阪、北と西は日本で一般的な町屋のスケールという異なったアーバンファブリック(都市構造)の真ん中に位置する興味深い立地です。
GGN 内でこの敷地のあるべきキャラクターは色々議論された結果、東⻄のどちら寄りになることもない、公園というニュートラルな存在でアーバンファブリックが全く違う2つのエリアを結んでいく方針が選ばれました。
うめきたという街を考えた時、1期のグランフロント側との繋がりの印象が強く、大阪駅からの人の流れが重視されるのは必然的ですが、2期開発ができることで、周辺エリアも徐々に変わっていくと思われます。
私達は小さな建物に飲食店がたくさん入っている面白さや、街ぶらしやすいヒューマンスケールの西側エリアを、うめきたの多様性を高める資産と見て、コンペ時から西側との繋がりを念頭にデザインするよう努力してきました。
将来性も考慮した周辺エリアとの繋がりを広めていくようなデザインを目指し、現状に対応しながら未来へのフレキシビリティを保有し、向かいたい方向へ誘導していくような4G(時間軸)的なデザインを議論しました。
また、初めてサイトを訪れた時の第一印象として、一号線(東西軸)の端に立った時、空間的にとても⼩さく感じてしまう事があげられます。そこでランドフォームを作り、一度に見渡せてしまわないような視線の操作や、緑で空間形成することによって公園を体感できる空間を大きく広げようというジェスチャーのアイデアが生まれました。
都市公園の在り方、また将来を見据えた時のあるべき姿とは
公共施設のみに注目するのではなく、公共空間として多様性と柔軟性のある公園デザインが都市公園には必要不可欠だと思っています。
うめきたの場合近隣の住人や大阪市民、ビジネスや、ショッピングや遊びに来た人、海外からの観光客、子供からお年寄りまで、さまざまな利用者の様々なニーズに対応できるプログラムやフレキシブルなエリアが共有できる空間の提供が重要です。
イベントに参加したり賑やかな街の雰囲気の中にいたい時もあれば、静かに風になびく木々を見上げてゆっくりしたい気分の時もあると思います。
色々な人々にとって自分の居場所が見つけられ、日常や思い出の一部になることにより公園への愛着が増し、自分の公園、自分の街という感覚の育成に貢献できる場となる事が都市公園の理想だと思います。
日本の公共空間では禁止事項が非常に多く、海外のソーシャルメディアでも「じゃあこの公園、何していいんだ」とネタにされるほどで、好きなことができる自分の屋外空間と感じにくいのではないのでしょうか。もっと自分の街の自分の公園と感じることができ、思い思いの使い方ができるような空間や、様々な人がクリエイティブに使える、そしてそんな人々からインスピレーションをもらえるような公園が増えていくと街が元気になると思います。
都市のQOL の面ではその土地の風土が感じられる空間提供も都市公園の役割の一つだと思われます。
高い建物が密集する都市では本来の環境より日照が低い場所が多かったり、強風だったりと植栽的にはチャレンジも多いのですが、運営のし易さだけを考えた選択ではなく、その土地らしさや季節感、生物多様性への貢献も都市の豊かさを高めるために大事だと思います。
地域や都市全体とそれぞれの都市公園の関係性を考慮して周辺地域全体でバランスが取れるようアプローチをしていくのが理想的だと思われます。
うめきた2期もそうですが、オープンスペースが少ない都市では災害時の公園利用が想定されていると思います。
限られた土地の大きさや非常時の運営・インフラニーズを始めとする様々な要件も考慮した、きちんとしたデータと専門家の想定に基づいた災害時の機能を日常の機能とバランスを取りながらデザインしていく必要性があります。
環境問題に対してもヒートアイランド現象緩和への貢献などは元より、ここ数年顕著になっている異常気象への対応やグリーンインフラを生かした防災機能なども土木エンジニアと一緒に推進していかなければいけないこれからの都市公園の課題の一つと考えます。
日本側チームとのコラボレーションに望む事とは
ビジョンやコンセプトを深く理解し、その意図に基づいて様々なデザイン判断を下し、詳細や施工、運営までつなげていく連携です。
変更や調整があるのは当然ですが一番大事なスピリットを失わないこと、大きなビジョンを忘れない事が一貫性・統一性があるプロジェクトには必要です。
個々の分野やオフィス関係者、一人ひとりにそれぞれの担当や役割があり、その一つひとつがプロジェクト遂行にとても重要で、どれ一つ欠けても同じクオリティのものはできません。個々の担当や役割を尊重しながら、お互いの専門知識や意見でプロジェクトをより良くするよう、デザインプロセスを進めで行くのが理想だと思います。
今回、ランドスケープのリードという役割で参加させていただき、バックグラウンドや習慣例の違いによる難しさを感じたこともありましたが、⽇本チームの皆さんのおかげで、それを乗り越え、今ではスムーズにそれぞれの役割をバランスよくコラボレーションできる方々が増えました。
日本では珍しいと言われるランドスケープファーストという考えは元より、GGNのビジョンやデザインプロセスなどを理解し、ご協力いただいた皆さんに深く感謝します。
これからの日本でランドスケープアーキテクチャーへの理解がもっと深まり、さらに色々な分野とコラボレーションしたりランドスケープがプロジェクトをリードしたりする機会がどんどん増えることを願っています。
うめきた2期を通じて協働体制ができた方々と、そのようなプロジェクトでまたご一緒できる機会があれば大変うれしいです。
GGN Landscape Architecture Ltd. 1999 年にキャサリン・グスタフソン、ジェニファー・ガスリー、シャノン・ニコルの3 人がシアトルに創立したランドスケープアーキテクチャ―会社。アメリカ・シカゴのミレニアムパークにある「ルリー・ガーデン」(2004 年)、ワシントンDC の「国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館」(2016 年)など多数の代表作品が挙げられる。2011 年にスミソニアン・クーパー・ヒューイット賞を受賞、2017 年にランドスケープの権威に贈られるASLA 賞を受賞するなど、世界でも注目のランドスケープ建築集団。本プロジェクトでは、プロジェクト全体のランドスケープデザインを牽引し、㈱日建設計・㈱三菱地所設計のランドスケープチームと協働する。…