平成の時代がまもなく終わります。日本人全員が頑張った戦後 昭和の高度経済成長期、そして産業の発展と共に建設された 団地。それは ~夢の団地~ と言われました。神奈川県住宅供 給公社では持続可能な社会の再構築を目指し、保有する団地 を利活用して再び「~夢の団地 その続き~」を作りあげます。
1.神奈川県住宅供給公社の先進的な企業文化
公社は、戦争で焼野原となった神奈川県内での住宅供給を目的と して、1950年に神奈川県により組織されました。当時の住宅スタン ダードの木造長屋、共同トイレに対して、市街地における耐火構 造、将来の文化的生活を目指した、RC造・各戸水洗トイレ。建築 費は木造の3倍となりましたが、多くの反対を押し切り建設し、戦 後日本の住宅のスタンダードモデルを構築しました。70年近い歴史 の中で神奈川県内に約8万戸の住宅を供給しました。
バブル経済崩壊と共に莫大な負債を抱え、解散や民営化も議論 された時代もありましたが、2013年に公社として組織・体制も新た に、保有物件の賃貸事業に特化して再出発しました。
財務体質の改善の為に格付けを取得し、社債を発行して財務基盤 を整備し、老朽化した建物の建替え、団地再生を行ってきました。
2.「団地再生」から「持続可能な社会の再構築」へ
人口減少、少子高齢化問題の解決には、明治維新から続いた右 肩上がりの産業経済社会体制、志向からの根本的な脱却を必要とし ています。比較的人口減少、少子高齢化の進行が遅い神奈川県で すが、県内は一様では無く「持続可能な社会の構築」を必要として います。公社においては所有する神奈川県内13,600戸の賃貸住宅の 利活用を図り、「団地再生」から「持続可能な社会の再構築」に事業 コンセプトを移行しています。
3.夢の団地 その続き
戦後の高度経済成長期、神奈川県では造船・家電・自動車など の産業振興が進み、県外から流入した多くの従業員の為の住宅が 必要とされました。この解決のために建設されたのが「団地」です。 当時は「夢の団地」として多くの人々の憧れでした。やがて高度経 済成長、バブル経済も終わり、団地で生まれ育った第2世代も巣立っ た今、多くの団地は居住者の50%以上が高齢者と高い高齢化率に なっています。
公社は30年前にスタートさせた「高齢者事業」のノウハウを通じ て、ハード面の建替えだけでは無く、コミュニティ再生等、ソフト 面での施策に着手しています。これらの事業を通じて「夢の団地」 では終わらせず「~その続き~」を実現します。
4.団地を取り巻く環境変化
少子高齢化、人口減少は団地を取り巻く環境変化だけではなく,様々な形で社会に波及しています。不動産で言えば直接的に「空き 家」の増加につながり、間接的には不動産市場の変化、地価下落、 将来的な固定資産税の歳入低下等が起きてきます。
人口減少では生産年齢人口の縮小がはじまっており、職種により深 刻な人手不足となっています。そして少子高齢化により団地内コ ミュニティの維持が困難になっています。道路、橋りょう、トンネ ル、上下水道等の社会インフラの老朽化の深刻度も増しています。 最近、上水道については、民営化を可能にする新たな法制も始まりま したが、民営化したからといって老朽化が止まる訳ではありません。
5.ファクト シート
1)空き家の増加
空き家の実態については、全国住宅総数6,063万戸のうち、空き 家は820万戸となります。これは2013年のデータですので、今では もっと進んでいると思います。神奈川県でみると住宅総数435万戸 の内、空き家は49万戸、11.2%がすでに空き家です。ということは、 単純に住宅供給の終焉なのではないかと考えてしまいます。
2)新規住宅着工数
それでは新規の住宅の着工数が伸び悩んでいるかというと、持ち 家は減少傾向に有りますが、いわゆる土地持ちの不動産投資として の貸家建設は増えています。基幹産業としての住宅建設を税制優 遇措置で補うために、2019年の10%への消費税率アップについて、 政府としては新規の住宅を購入した場合の税制優遇の拡大を行 い、住宅着工数の保持を目論んでいるのではないでしょうか。
3)固定資産税の歳入低下
都心以外での地価下落による固定資産税の歳入低下、人口減少による市町村の歳入低下、財政再建団体への転落等の問題は神奈 川県では起きていません。例えば横浜市をみると歳入は伸びてお り、川崎市、相模原市ともに悪い兆候は有りません。そして地方の 二宮町の歳入は少々下がりつつありますが、大磯町や箱根町では 違っています。神奈川県は全国的にみてもまだ恵まれ、地域の人口 減少により税収低下や、それらに伴う公共対策の縮小はまだ起きて いませんが、いずれ起きる可能性があると考えます。
4)高齢化率と要介護率
日本の高齢化率の将来予測です。また加齢に伴う要介護率の上昇は 大切な要素になります。高齢化率(65歳以上)は、全国(2017年ベース) では27.5%前後、高齢者の要介護率が18%位ですが、公社の若葉台団 地(1.4万人居住)では高齢化率が46%と非常に高く、これはバブル経 済期の前後の一時期に同年代の世帯の入居が集中したためです。そこ から年齢が当然一緒に上がり、高齢化率が上昇します。しかし、高齢 化率が高いのに対して要介護率は全国平均より低い11.6%です。
また、二宮団地は戸建てと中層住宅の混在した開発だったので、 入居の時期が段階的となっており、高齢化率は全国的平均より高いのですが、やはり要介護率は低く、若葉台と同じ位になっていま す。これらの要因は何なのかと調査中です。
5)非正規職員の割合上昇
平成の時代に入り増加したのが非正規職員です。2013年から増 えて既に40%近い方が非正規雇用です。戦後確立された日本型経 営の終身雇用が崩れています。不安定な非正規職員の増加と、それ による社会への影響が、いま我々の課題になっています。
6)神奈川県内の道路、橋りょう、トンネル、上下水道インフラの老朽化
問題点はあげるとキリがないくらいあります。これら社会インフ ラの老朽化は近い将来、我々の生活にも重くのしかかってきます。 神奈川県では、平成27年4月1日現在、1,206橋の橋りょうを管理 しており、これらは高度経済成長期(1950年代後半~1970年代前 半)に集中的に建設されています。築50年以上の老朽化した橋りょ うは平成27年4月現在で約34%ですが、今後急増するとみられます。
また、82ヶ所のトンネルと9ヶ所の洞門を管理しており、これら は高度経済成長期(1950年代後半~1970年代前半)に集中的に建設 されています。築50年以上の老朽化したトンネルや洞門は平成27年 4月現在で約24%ですが、今後急増するとみられます。
送配水管路は、総延長9,119kmにおよび、昭和46年以前の鋳鉄管 を老朽管と位置づけ、計画的に更新を図っています。しかし平成24 年末で老朽管の割合は全管路の18%を占めています。
7)食料自給率の低下
当公社では二宮団地で農業に挑戦しています。なぜ団地と食料自 給率が関係するのかと思うかもしれませんが、高齢者事業における 入居者約1,000人分の食材調達で、地産地消を目指しており、食材 に関して関心が高いのです。
食料自給率は2017年ベースで38%(カロリーベース)。昭和40年は73%で、なんとここ30数年で半分くらいになってしまいました。 2010年の耕作放棄地は39万6千haですが、昔はもっと耕作放棄地が 少なく25年前は13万5千haくらいでした。すごい勢いで耕作放棄地 が増えてきています。耕作放棄地が増えてきた理由として、専業農 家の方々が高齢化し、若い人たちの参入が無いからです。島国であ る日本の自給率の低さは国際紛争等により、食料が輸入できなく なった場合の安全保障上の問題でもあるのです。
8)エネルギー問題
当公社では中井町に保有していた遊休地を使い20ha以下の開発 でメガソーラーを建設しました。またそこで伐採した樹木を加工して横浜の山手駅近くの賃貸住宅建替えの際、内装材として加工して 使用しました。原子力、化石燃料の割合を減らして自然エネルギー への転換を積極的に実行して行く必要があります。
6.団地の実情
団地周辺の環境を見てゆくと、製造業の発展と共に団地が形成さ れたのに対し、「円高」による製造業の海外移転、さらに生産年齢 人口の減少が製造業の県外移転に輪をかけています。明らかに地域 の製造業減少は団地入居者の減少とつながっていきます。
団地内では少子高齢化による団地内コミュニティが希薄化して います。入居者の一人住まい、いわゆる独居の増加です。そして独 居の増加に伴う孤立死も増えています。公社でも保有管理する 13,600戸に対して、平成29年度の報告ベースで孤立死に対する問い 合わせが50件ありましたが、死亡は20件で残りの方々は早期発見 で助かっています。これは新聞の配達人等により新聞が溜まってい…