東京都千代田区大手町
ランドスケープデザイン=株式会社三菱地所設計 写真=松榮宏幸、牛尾幹太*(特記を除く)
Hotoria Plaza
Chiyoda-ku, TOKYO.
Landscape design by Mitsubishi Jisho Sekkei Inc.
Photo by Hiroyuki Matsue, Kanta Ushio*
ホトリア広場のランドスケープ
文=松榮宏幸
株式会社三菱地所設計 都市環境計画部 チーフコンサルタント
東京都千代田区大手町1丁目1番地に整備されたホトリア広場は、大手門タワー・JXビ ル(2015年11月竣工)と大手町パークビル(2017年1月竣工)の2つの敷地を繋ぐラ ンドスケープ空間として整備された約3,000 ㎡ものオープンスペースである。
皇居の緑を大手町や常盤橋、日本橋方面へと広げる緑のネットワークの起点となること を期待し、大手濠の緑や二の丸雑木林を意識した緑豊かな緑地を整備すると共に、オ フィスワーカーを始めとする来街者のコミュニティを育む環境の創出を目指した。
計画地の西に広がる皇居東御苑を大手門から入り北西に向かうと、昭和後期に整備 された二の丸雑木林が広がる。雑木林は多様な環境が保たれ、都心でありながら様々 な生物の生息空間を提供する貴重な緑地である。
一方、大手町は地下鉄の5路線が乗り入れ東京駅も徒歩圏という立地から、多くのオ フィスワーカーが多忙な日々を過ごす街である。
広場を整備した敷地にあった解体前のオフィスビルに立つと、西の皇居上空に開ける 広い空からの陽光が大手濠の水面を照らし、西日の影が路面に伸びている。眼下に 望むオフィスビルと皇居の緑は何にも遮られることなく繋がっていた。
このような立地を踏まえ、生物多様性の視点を意識した上で、人と人、人と街、人と自 然をつなぐ結節点となるランドスケープのコンセプトを「交流の森“ INTERACTIVE FOREST” 」と定め、緑豊かなコミュニティ広場をプロジェクトの早期に提案し、様々なス テークホルダーと整備イメージを共有した。竣工後はホトリア広場として多くの人々が訪 れ、多様な空間体験を楽しめるランドスケープとなっている。今後はグリーンインフラの ひとつのあり方として、周辺の緑や生きもの、街、コミュニティなどのネットワークの情報 発信拠点として機能することを期待している。
ビル事業から見た緑豊かなランドスケープの価値
文=只野宏幸 三菱地所株式会社 丸の内開発部 副主事
私達、三菱地所がこの地に、今はホトリア広場 と呼ぶ「環境共生型緑地広場」を整備する構想 を企画したのは2010年迄遡る。大手町一丁目 1番1号、日本経済の中心地でありながら東京 都心随一の豊かな自然を有する皇居に広く面 するこの地に、「皇居外苑の豊かな自然と歴史 的景観の調和」をコンセプトに開発を取り進め る中、この地に相応しい緑と広場の在り方とし て、「環境と人の共生」をキーワードに位置づ けた。ただ人が賑わう広場でもなく、ただ多様 な生き物が生息できる緑地でもない。環境と人 と生物が繋がること、「生物多様性」「環境共 生」を街の人々に感じて頂くこと、それが、単一 のプロジェクトではなく大手町・丸の内・有楽町 にて広く街づくりを手がける当社の社会的使 命と意義であることを見いだした。そして、取 り組むからには自分たちの思い込みではなくき ちんと第三者の視点で評価されるレベルで取 り組むべきとの強い意志をもって取り組んだ 結果として、ABINC(いきもの共生事業所認証) やSEGES都市開発版といった認証制度を取得 したものである。
また、ホトリア広場を、来街者だけでなく、就 業者にとっても憩いの広場となりコミュニティ 活動の拠点とすることで、オフィスワーカーに とっての付加価値へと変えたことも特徴だ。 緑・水・生物といった豊かな環境による「包まれ 感」は人々の潤いとなり、約60人分ものベンチ やWi-Fi環境の整備、業種業態の垣根を越えた 交流・活動拠点「3×3 Lab Future」( 隣接する大 手門タワー・JXビル1階)との連携した多様なイ ベント開催や地域コミュニティ活動への参加 は、ただ安らぐだけでない新しいアイデアの生 まれるようなサードプレイスとなる。
このような取り組みが、当社だけでなく、大手 町・丸の内・有楽町の開発を通じて、視覚的な緑 に留まらない「環境共生」の街への拡がりを実 現していきたい。
都市のランドスケープをめぐる動きとホトリア広場
文=植田直樹
株式会社三菱地所設計 都市環境計画部 ランドスケープ設計室長
東京都心部では、再開発に伴い様々なオープン スペースが数多く整備されるようになった。公的 な公園緑地とこれらの企業緑地が総体としての 魅力を発揮することで、今日的な東京のオープン スペースの快適性向上が実現されているともい える。こうした状況の背景には、総合設計制度 などの都市計画諸制度や都市再生特別措置法 などの適用による開発事業の増加があるが、な によりも整備されたランドスケープが開発事業の 差別化要素と認識されているだけではなく、高い 外部経済性を持っていることが広く認識されるよ うになったということが重要である。
そうした中にあってこのたび完成した「ホトリア広 場」は、都市中枢部における生物多様性の維持 と保全を人々の活動との繋がりの中で捉えた企 業緑地、として特徴的なものではないかと考えて いる。大手町の大手門に面する立地にあるこの 場所においては、歴史のみならず都市の大規模 な緑のコアとしての皇居をどう捉えるかが大きな テーマにならざるを得ない。皇居の歴史的景観 要素や豊かな生物資源との繋がりを考えること、 そしてそれらを屋外空間の基底となる要素として 構成し、訪れた方々が憩い語らえる空間がその 中に点在するという空間構成を目指したことはラ ンドスケープアーキテクトの立場からは必然とも いえるが、それが事業プロセスの中で自然な流れ として広く関係者間で共有できたことが、本プロ ジェクトで最も大切なポイントであったといえる。
ホトリア広場では既にいきものモニタリング活動 がスタートしたが、大丸有エリアの他の企業緑地 と作業を共通化させて、生物多様性に関する情…