OSAKA UMEDA TWIN TOWERS SOUTH 1 UMEDA, OSAKA
Landscape: WIN Landscape Planning & Design
Talk by Yoshihiro Matsuda, Yoshichika Umeda, Kenji Yachi, Seiho Suzuki, Toru Ichikawa, Shinji Tanabe, Junichi Inada and Eri Imose
Photos by Tomoki Hahakura
「みどり」による持続可能な活力に満ちた街(松田圭洋 阪急阪神不動産㈱)
大阪・梅田地区は、1900年代初頭に阪急梅田駅・阪神梅田駅が開業して以降、阪急電鉄・阪神電気鉄道により「100年の街づくり」を実践してきた地である。本計画地は、大阪・梅田の中心にあり、両社が街づくりを行ってきたエリアの結節点に位置する。本計画は、両社の2つの老朽化したビルの建替え計画を基盤に、敷地内外にわたる大規模な公共施設の整備を“都市貢献”として併せ行うことで、大阪・梅田の「次の100 年の街づくり」を牽引するプロジェクトである。
「大阪・梅田を持続可能な活力に満ちた街にしたい」という想いの下、事業者・設計者・施工者が一体となってそれぞれの知恵と技術を結集させ、これまでの常識を遥かに超えた都市貢献内容を提案し、歩道・地下道の整備・管理を主軸とした“都市貢献”を実現させた。
そのひとつが「みどり」の取組みである。周辺の地上は、幹線道路で分断され、歩道には駐輪場が立ち並ぶなど、来街者の歩きやすさや居場所が不足した界隈性の乏しい空間であった。来街者は、複雑に発達した地下空間を主な移動手段としており、賑わいの中心が地下に偏っていた。そういった中、我々は、地上に賑わいを取り戻すためには、地上に居心地の良い環境を創り、人々の滞在時間を延ばすことが大切で、「みどり」がその環境創りの起点になると考えた。
“都市貢献”として、約1kmの歩道緑化および1,500 ㎡以上の建物内緑化を行ったが、これらは官民の境界を超えて一貫したコンセプトによりデザインされている。単に緑量を確保することに留まらず、歩道緑化においては多種多様な街路樹・低木を緻密に配置することで、豊かな彩りの空間が生まれており、その彩りは大壁面の緑化、そして空中庭園に連続していく。また、単にこれら緑化施設を管理することに留まらず、産学連携による効果測定、植物を使ったイベントによるみどりの魅力発信、周辺エリアマネジメント団体との協業など、計画地周辺のみどりを核に地域連携が深まり、人々の交流と賑わいが生まれている。
街のみどりと建築のみどりをダイナミックに繋げることで、柔らかに変化を続ける都市風景がここに生まれ、また、これらが将来に渡って持続的に維持される営みがここに始まっている。
梅田木立 ―“梅田の次の100年の礎”(梅田善愛、谷地健児、鈴木星穂㈱竹中工務店)
地上の歩行者空間を拡幅し、官民境界を越えて3層歩行者ネットワークを繋ぎ、人の賑わいと緑を溢れさせ、まちの持続可能性を高めるような生命観を建築全身で表現した。歩道から低層部の壁面緑化を経て空中庭園へと繋がる都市のヴァーチカルフォレストを形成し、淀川水系+六甲山系の在来種112種を植え、小鳥やチョウを呼び込み、空中庭園に新たな生命の孵化をも実現した。大地から建ち上がるタワーには、基壇型のビルにはない、養分を吸い上げ天空へ伸びる大木のような生命観を表現した。
緑と共に重層するまち-空中へ繋がる都市のオアシス-
3層歩行者ネットワークから展開するまちづくりを、百貨店を通して重層的に広げ、人々が自由に使える空中約1万㎡の豊かな都市のロビーへ繋いだ。ここには145mの交流ストリートを中心に、オフィスロビー、カンファレンス、カフェを配し、上階のオフィスサポートフロアや誰もが利用できる屋上庭園と、回遊性のある経路空間で有機的に繋ぎ、買物客やオフィスワーカーのみならず様々な人を呼び込み、出会いや交流を誘発する空間とした。この空中の公共空間は、「梅田木立」の太い幹として、地下から地上へと吸い上げたまちの活力をさらに空中まで引き上げ、立体的で豊かな都市のオアシスを形成する。
オーガニックファサード-サスティナブルなまちづくりの象徴-
全長240mにわたる百貨店ボリュームを、豊かな植栽とモーションライティングを織り込んだオーガニックファサードで包み込み、整備した歩行区間と共に楽しげで生命観溢れる都市景観を生み出した。アルミパネルの密度を中央部で落とし、植栽と共に百貨店の営みをまちに繋げることで、都市空間に華やかな表情をもたらした。
生物多様性への配慮を主軸に計画した壁面緑化は、大小6種類487基の特殊プランターを市松状に編み込み、広域的な生き物調査と四季の移ろいが感じられる品種選定の両面から植栽計画を行った。多孔質なアルミパネルと植物の蒸散が生み出す微気候により建築の外装周辺が冷やされ、ヒートアイランド抑制にも寄与するサスティナブルなファサードを実現した。
持続可能な都市緑化と造園業界の将来への想い(田邉晋治 阪神園芸㈱)
竣工時の華々しい緑が、時が経過していくごとにその輝きを失っていく。美しい樹形が崩れてしまったり、また必要以上に剪定されたり、色とりどりの下草は雑草まみれになっていく。そんな光景を何度見たことか。私たち造園を生業とする者は、そんな光景を見るたびに物悲しい気持ちになってきた。何故そうなっていくのだろう。初期の計画で植栽基盤が不十分だったり、維持管理段階で予算が縮小され、十分なメンテナンスができなくなったなど、要因は色々考えられるが、要は計画・設計・コンセプトづくりから施工、管理・運営へと一貫した意思疎通がないからではないか。それぞれのプロセス毎にプレイヤーが変われば、その段階での事情が最優先され、当初の思想、想い、描いていた将来像が捻じ曲げられていく。大阪梅田の玄関口、阪急阪神グループのシンボルとなるこのプロジェクトは、それだけは絶対に避けねばならないという気持ちで、緑化プロジェクトとしては長丁場となった足掛け8 年、私たちは様々な議論を重ねてきた。
本プロジェクトでは、施設の緑化部分を事業主に代わって造園会社である当社が投資し、設計への参画、施工そして植栽管理までをトータルサービスとして提供するスキームを事業主に提案し、認めていただいた。この実現には会計法上の問題や、投資回収と耐用年数の整合、長期的なコストの見通し、サービススタッフの業務計画など多くの苦労があったが、これらによってすべてのプロセスで、当社が主体性を持って関わることが可能となり、事業主と一体となって建設当初の理想を維持、発展させることができ、都市の緑が持続性を持って、明媚さをリザーブできるシステムとなったと考えている。
大都市における厳しい気象、場所的な条件の下、植物が順調に生育できる環境を創るために多くの方からアドバイスをいただいた。特に兵庫県立大学大学院、兵庫県立淡路景観園芸学校の方々には、都市における緑の意義、生物多様性などの観点から貴重な助言をいただき、その結果、今後も本施設を活用して、都市緑化の研究や、普及活動を行うことについて産学連携協定を締結する運びとなったことも、このプロジェクトの大きな成果と言える。
施設の地上部分には、私たち造園業の仕事を紹介するショーウィンドウを設置した。この場所のプランターには、施設に常駐するガーデナーが毎日立ち寄り、通行される方へ私たちの仕事振りを見ていただいている。さらに施設完成と同時期に発足したエリアマネジメント団体と協働し、地域住民やオフィスワーカーに、緑の素晴らしさを伝えるイベントを行っている。このような活動を通じて、広く緑を身近に感じ、その素晴らしさを実感していただくことが、我々造園業の仕事のやりがいや、誇りにつながるとともに、持続性のある都市緑化がさらに広がっていくきっかけになることを願っている。
樹種選定と維持管理について
外壁が南東から北西にラウンドしており、場所によって日照や気温、風量などの植栽環境が違う。樹種選定については、先行完成した現地において実験用プランターを設置し、気温や風速、土壌の温度と水分量、電気伝導と、樹木の成長度合いは実証実験の観察・記録をもとに決定した。またプランターを設置している壁面直下が常時人の行き交う歩道ということで、日常の植栽管理において安全面・技術面で多くの課題があった。樹種の検討と同時に、当社で常駐するスタッフ自ら作業性の検討を行ったうえで、形状の変更や、特殊な植栽管理道具の採用など工夫をしている。
みどりの道(市川徹 ㈱竹中工務店)
地上の歩道植栽から壁面緑化、そして屋上広場まで、みどりが空に向かって連続していくような植栽計画とした。
建物が完成して数ヶ月が経った現在、屋上広場で様々な生き物が確認されている。中には、大阪府のレッドリストにて「準絶滅危惧種」に指定されているサラサヤンマも確認された。植栽配置計画において、地上の生き物が壁面を経由して屋上まで飛来することを狙い、鳥や昆虫が好む特定の食餌・吸蜜植物を、複数のルートを描くように壁面に配置した。意図的に設けたこの“飛翔ルート”を実際に生き物が辿っているか定かではないが、現在、想定を上回る種類の生き物が壁面・屋上を飛び交っている。
壁面緑化の内側でみどりを愛でる買物客と、外側でみどりを飛び交う生き物が、屋上広場で出会う、そんな場所が実現している。 そしてこの生き物調査にも、植栽管理者である阪神園芸が密接に関わっている。日々の植栽管理において生き物を発見した際、専用の記録シートに「どんな生物が/どこで/どの植物で/何をしていたか」を詳しく記している。今後、都市における生物多様性創出の手掛かりとなるであろう、精度の高い記録が集積しつつある。
現地実証実験を経て完成、そして育てていく緑(芋瀬英里 ㈱ウイン)
緑の役割、また緑をまとう建物が都市に与える影響について、現地実証実験段階で四季を通じて3 年に渡るサーモグラフィー調査を行い、検証を行った。このプロジェクトの完成までのプロセスとして、現地実証実験を行うことをランドスケープ側から提案し、チーム全員が、それぞれの立場でその時間や起こる事象を実際体験・共有できたことは大変意義深い。また完成した後もモニタリングを継続しながら、成長への手助け(維持管理)を行っていこうとしている点も特徴的である。
建物は、西~北~東面に湾曲しており、特に日照の時間が場所ごとに異なった。温度分布が顕著に見られる、東面の朝日が当たる時間、サーモグラフィーで温度分布を見てみると、ダブルスキンの二次壁面が直射日光を浴びて温度上昇が見られる時にでも、ファサードのアルミパネルと植栽は、気温と連動する程度にまでしか上がらないという驚きの結果が可視化されて見られた。通年でみると、夏場の気温上昇時の二次壁面とファサードの温度差が顕著で、10 度以上の差異が見られる日も少なくなかった。
今後も、成長する建物として、その成長していく過程を追っていきたいと思う。
緑のチャレンジ(稲田純一 ㈱ウイン)
今回のプロジェクトでは、計画段階の現地実証実験から完成までのランドスケープの全体アドバイス・監修に携わった。
建物ファサードはダブルスキンで、アルミの特別なパンチングパネルと植栽プランターが組み合わされた一次外壁。自然環境とは違う都市の特殊環境、東西南北、階層ごとに変化する気象条件、限られた客土のプランターの中に多層の緑を生育させるという非常に難しいプロジェクトであった。ダブルスキンの建物ファサードが、都市環境における“景観”だけでなく、都市のヒートアイランド制御についても寄与していることを検証するためのサーモグラフィーによる調査の結果は、通年にわたって、非常に多様性のある温度分布が観察された。このことは、建物表面の空気密度や温度により、極めて微風のマイクロクライメイトの風が生じていると考えられ、また、建物表面のヒートアップを軽減していることも検証できた。
色々な試行錯誤を繰り返し、チーム力で成功に導いた、世界的にも非常に貴重で価値あるチャレンジだと確信する。
◆メンバー紹介
大阪梅田ツインタワーズ・サウス
建築地 大阪府大阪市北区梅田1丁目1番地13番1号
地域・地区 商業地域、防火地域、都市再生特別地区
建物用途 百貨店、オフィス、カンファレンス 等
建築面積 約12,200㎡(重複利用区域含む)
延床面積 約260,000㎡
壁面緑化・屋上広場(緑化)面積 約1,500㎡
事業主 阪神電気鉄道㈱・阪急電鉄㈱(開発担当:阪急阪神不動産㈱)
基本計画・特区申請・基本設計 ㈱日本設計
設計・施工/植栽設計 ㈱竹中工務店
ランドスケープ全体アドバイス・監修 ㈱ウイン
植生施工・維持管理 阪神園芸㈱
佃実証実験期間 2015年5月~2018年3月
現地実証実験期間 2019年1月~2021年2月
緑化工事施工期間 2021年5月~12月
・国土交通省所轄「サスティナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」に採択
・CASBEE 大阪みらいSクラス
・㈱日本政策投資銀行「DBJ Green Building 認証」最高ランク(5つ星)
・SEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)都市のオアシス(2022)認定…