Miyano Oka Forest Kinder Garden
Sapporo City, Hokkaido
Landscape Design by TAKANO LANDSCAPE PLANNING Co.,Ltd.
Architecture Design by Atelierzo
Photos by TAKANO LANDSCAPE PLANNING Co.,Ltd.
Text by TAKANO LANDSCAPE PLANNING Co.,Ltd.
全ては子供たちの未来のために
現代都市部の子どもたちを取り巻く状況はと ても複雑になっている。核家族化、少子化、人 口減少などの影響により他者とのコミュニケー ションが希薄になっている。人の暮らしと自然 との距離が遠くなり、日々の生活で自然の大切 さを実感する場面が少なくなっていることも課 題となっている。幼稚園は子どもの暮らしの場 であり、この時期に培った感性が将来の成長に 大きく影響するため、心身の健やかな成長を支 える環境を備えることが重要である。
この幼稚園は都市部にありながら、敷地は 森、草原、水辺という豊かな自然を包括してい る。日々変化する自然の中で遊び育つことで自 然や他者とのコミュニケーションを学び、地球 環境に対する認識も実体験として育まれてい く。
友達や馬、先生以外も含めた大人との関わり の中で自分と他者の違いを知り、他者を尊重す る心を育む。
全ては子供たちの未来のために、既存の幼稚 園の枠組みを超えた多くのチャレンジを行なっ ている。
背景
宮ノ丘幼稚園は北海道札幌市に位置する。札 幌駅から約8km西に位置し、手稲山の山裾部で 都市部と自然地の接する場所に35年前に開園 した。
プロジェクトは2006年に始まった。園舎の老 朽化、園児数の増加から新園舎建設の必要性に 迫られたが、手稲山の麓に位置する斜面地で自 然環境を尊重しながら必要な建築的機能を満た すことはハードルが高く、建築優位の発想では 幼稚園の教育理念を壊しかねないと危惧した園 長がランドスケープを軸とした計画としてプロ ジェクトをスタートさせた。
そのため、ランドスケープアーキテクトがプ ロジェクトの全体を統括し、建築計画をリード しつつ、環境調査、基本構想から実施設計まで を全て担当した。計画・設計・工事と並行して教 員や保護者、園児、地域住民らを含む参加型プログラムを取り入れ、このプロジェクトを機に 幼稚園が地域にとってのコミュニティの場の実 現に近づくように進めた。
むらのような幼稚園を目指して
敷地は当時0.9haであったが、プロジェクト のスタートにあたり隣接地を買取り1.7haとして スタートした。この隣接地の獲得にはランドス ケープの観点から大きな意義があった。当初の 幼稚園は斜面地に草っ原の運動場と小さな小 川が流れていた。これに加えて隣接地は手つか ずの森であり、幼稚園の活動エリアとして新し い環境を手に入れることができた。幼稚園活動 の多様性は森、草原、水辺とその環境多様性が 格段に増したのである。現在は第3期としてさ らに敷地を拡張し2.4haとなっている。
敷地環境と教育理念をさらに密接にするため に、我々は子供をとりまく現代の環境について も話し合った。子どもを取り巻く社会状況の課 題、子どもたちの成長と環境との関わりの大切 さ、感性と野生と知性を大切にする教育理念。
この実現へ向けては、人と自然がお互いに良 い関係で影響しあって生きる里山の暮らしと、年齢や目的のことなる様々な人が集い支え合う コミュニティが想起され、「むら」のような幼稚 園を目指すことを目標とし、4つの基本的な考え を柱にプロジェクトを進めていった。
1.野生、健康を育む のびやかな自然、生き物たちとともに
子どもたちは日々、変化に富んだ地形に点在 する拠点を行き来する。斜面での遊び、森の中 の活動、農作業等の軽労働を通して反射神経、 強い足腰の基礎体力が自然に育まれる。 ここで は敷地内斜面を活用したスキーや、水泳といっ た季節のスポーツに力を入れている。また乗馬 は単に健康に寄与するだけではなく、生き物と 触れ合うことを通して、優しさを育み、心の解 放に寄与する。また、畑では春に野菜を植え、 日々生長を実感し、秋に収穫し、自分たちが食 するものになることを知る。世話をしている馬 の糞から堆肥をつくり、野菜の栄養になること を通して循環を体感する。食べることを通して 新たな感動を共有し、大切な味覚の原体験を重 ねていく。様々な体験は現代に失われがちな 「野生」を育んでいる。
2.感性を育む 五感に訴える環境、空間の育成
子どもたちの感性は幼児期の体験に強く影響 される。この時期に様々なことを体験し、肌で 感じ、身体感覚で記憶することは極めて大切で ある。この幼稚園が基本的に持っている自然の 力を損なわないよう、自然と人工物のバランス を取り自然の優位性を保つことにとても力を注 いだ。そして長期的に自然環境を育成すること も大切に考え、そのためのプログラムも作成し た。
木の葉の揺らぎ、木もれ日、尾根を渡る風、 風に揺れる草原、落葉、せせらぎの音、小鳥の さえずり、カエルの声、馬のいななき、森の匂 い、夏草の匂い、焚き火、パンを焼く匂い、温度…