Tokyo office of Planet Co., Ltd.
Chiyoda, Tokyo
観葉植物による空気浄化と
メンタルへルス、知的生産性の向上
文=松本 博(豊橋技術科学大学 名誉教授 株式会社プラネット 特別顧問)
はじめに
一般的な従来型オフィスは、狭小などの空間的 な問題、熱・空気環境の悪化、執務者の衛生 管理・健康影響、精神的・生理的ストレス、労 働生産性の低下、BCP(事業継続計画)、リス クマネジメントなど、IEQ(室内環境の質)に関係 する多くの問題を抱えている(図1)。これらの諸 問題の解決には、これまで換気、空調、照明な どの建築設備によるアクティブ制御によるIEQ の 改善が中心であった。しかしながら、これらのオフィ ス環境の改善に対しては、効率(Efficiency)、エ ネルギー(Energy)および経済性(Economy) のトリレンマによるトレードオフに加え、複数の環境 要素を総合的に考慮する複合環境評価の複雑さ が関わり、十分満足できる解決には至っていない。
室内緑化の効能が一般に認知され、オフィスな どのワークプレースや住宅などの室内環境デザイン やバイオフィリックデザインとして広く普及するには、 これまで定性的に知られている植物のもつ様々な 効能の定量的なエビデンスを実験や調査によって 科学的に明らかにして、信頼性のある普遍的なデー タとして提供することである。ここでは、これまで筆者 らが行ってきた観葉植物のグリーンアメニティ効果 に関する実験や調査結果の一部を紹介する。
デシケータ実験による
観葉植物の空気浄化能力の定量的測定
観葉植物によるVOC(揮発性化学物質)除去 のメカニズムは、葉面の気孔から吸収されたVOC が植物の根に転流することと直接根に空気が触れ ることによって、根に共生する菌根菌とそのパート ナー細菌(バチラス属、シュードモナス属)などの微生物によって分解されると言われている。また、最 近のNASA の研究等で室内汚染空気をハイドロ カルチャーで栽培された植物の根に直接触れさせる ことにより、効率的に化学物質が分解され、その分 解物を栄養に植物がさらに活性化することが分かっ てきている。筆者らの植物のグリーンアメニティ効果 に関する研究は、定性的に室内空気浄化能力が あると言われていた観葉植物のVOC 除去効果を 定量的に明らかにすることから始まった。このデシ ケータ実験により観葉植物のVOC 除去量を定量 的に測定することができる。有効内寸法560× 483×986mm(H)の透明なアクリル製デシケー タに中鉢程度のベンジャミン、スパティフィラム、ア レカヤシ、コンシンネを1 鉢入れ、光源として白熱灯, 蛍光灯,波長分布の異なる複数のLEDランプを用 い、微量のホルムアルデヒドおよびトルエンをデシ ケータ内に注入し、デシケータ内のVOC 濃度をマ ルチガス分析計で連続測定し、植物のVOC 除去 量を算出した(図3~5)。図3は光源に蛍光灯(植 物最上部で照度350 lx に設定)を用いた場合の VOC 注入後20 時間の葉面積1cm2 当たりのト ルエン除去量を示す。この実験ではシンゴニューム とポトスが大きなVOC 除去効果を示した。また、異 なるLED 光色による照度当たりのコンシンネの20 時間後のトルエン除去量の比較を図4に示す。この 実験では青色LED が最も大きな除去効果を示し た。蛍光灯の下で異なる照度におけるトルエン除去 効率(初期濃度に対する注入後12 時間の濃度 の割合)を図5に示す。植物の種類によってトルエ ン除去効率が最大となる照度が異なり,スパティフィ ラムとコンシンネは比較的低照度,アレカヤシは比 較的高照度で高いVOC 除去効率を示した。
緑量(緑視率)とメンタルヘルス及び
作業効率の関係
室内緑化がワークプレースの環境改善、ワーカー のメンタルストレス改善、作業効率の向上などに効果があることは定性的に認識されてきているが、最 適な緑量などの定量的なエビデンスが存在しなかっ た。筆者らは視界に対する視界に入る緑の割合で 定義される緑視率に着目して、フィッシュアイ(魚眼 レンズ)によるデジタル画像(RGB)から植物の緑 のピクセル数を抽出して、画像処理ソフトが誤認識 する緑のピクセルを手動で修正しながら緑視率を算 出した。これらの植物に対する被験者の心理・生 理反応および作業効率を求めた(図13~16)
異なる緑視率における室内印象評価結果を図 21 に示す。緑視率9.2%までは印象評価は大き く上昇したが、9.2%を超える値では上昇率は小さ かった。また、緑視率と自覚症総合訴え率及び AMYscore の関係を調べると緑視率9.2% 以上 ではそれらの値に大きな変化はなかった(図14)。 緑視率とパフォーマンス向上率(植物なしを基準 とした値)については、緑視率8%を超える場合 に向上率が小さくなる傾向が見られる(図15)。 一方、緑視率と加算やタイピング等の単純な作業 比べて高度な知的作業(第3 階層知識創造)の 関係を示す図16 によれば、緑視率の増加に比例 してパフォーマンスが向上した。
以上の結果より心理・生理反応及び作業効率 を総合的に評価して、模擬オフィスのような比較 的狭い空間の最適な緑視率は10~15%程度で あると考えられる。今後、実オフィスを対象にした 実証試験でこの値を検証する必要がある。
実オフィスにおける…