神奈川県足柄下郡箱根町
建築・ランドスケープデザイン=株式会社日本設計
文=齋藤求(株式会社日本設計)
写真=谷川ヒロシ(トロロスタジオ)** 齋藤求・森 豊(株式会社日本設計)、編集部*
Hakone Kowakien Ten-Yu
Hakone-machi, Ashigarashimo-gun, KANAGAWA
Architecture & Landscape Design by NIHON SEKKEI, INC.
Text by Motomu Saito [NIHON SEKKEI, INC.]
Photos by Hiroshi Tanigawa (Tololo studio)*, Motomu Saito ・ Yutaka Mori [NIHON SEKKEI, INC.], Editorial Desk
車沢の自然を再生した渓谷庭園
箱根小涌園は宿泊施設である「箱根ホテル 小涌園」「箱根小涌園ユネッサンイン」と日帰り 温浴施設「箱根小涌園ユネッサン」を中心にリ ゾート地として発展してきた。「箱根小涌園 天悠」は、「箱根小涌園ユネッサンイン」と「箱 根小涌園ユネッサン」の屋外ゾーンの一部で ある車沢の渓谷エリアに点在したユニークな 露天風呂の跡地に建て替えられ、老朽化した 「箱根ホテル小涌園」に代わる旗艦宿泊施設と して整備された。
計画地は富士箱根伊豆国立公園内に位置 し、敷地内に車沢という渓流を持つ。この特 徴的な自然を取り込み、これまでの歴史・文化 とあわせて新たな「リゾートとしての旅館」を 構築した。国道 1 号から県道 734 号を上るアプ ローチは、ゲストに駆け上がって高地に到着 したかのように意識させ、エントランスの雲 海をテーマとした屋上庭園越しに箱根外輪山 へつながる風景を見せる。 150 室の客室各棟 は立地の魅力を活かし、西棟は車沢の音・苔む した岩・古木の梢が間近に迫る野趣を備え、 東棟は渓谷庭園を一望でき、北棟は外輪山の 雄大な眺望を享受できる。
レストランには、車寄せ・駐車場の目隠しと なる築山の庭園を配置し、庭園越しの外輪山 も望める空間とした 。大浴場は、水平線の空 と山並みを体感できる「浮雲の湯」と、車沢の 自然と滝を堪能できる「車沢の湯」の、趣向の 異なる露天風呂を用意している。 1 階のバー ラウンジは落ち着いたインテリアと庭園に包 まれた空間である。その並びには趣きの異な る特別客室も 6 室設けられ、 3 室は車沢に面し た専用庭を備える。
自然公園法や砂防法の許可の下に庭園は 実現しており、植栽は富士箱根伊豆国立公園 の「箱根地域に適した植栽種一覧表」を基に、 計画地の台地上は箱根の山々に多い植物、車 沢沿いは芦ノ湖や早川沿いで見られる植物を 用いるなどの使い分けを行っている。
渓谷庭園は、車沢に沿って上流部へとつな がる。建て替え前は車沢上にも建物があった が、スパへ渡るブリッジ以外は開渠化して県 道からの奥行きを作り、建物跡地は花木を取 り混ぜた斜面林として再整備している。渓谷 庭園は以前は、「箱根小涌園ユネッサン」と一 体の変わり種風呂が連続するにぎやかな空間 であった。 1 階から 6 階に相当する高低差の庭 園散策路は、従前の各種お風呂を散策スポッ トに改変し、既存樹木を活かしながら季節を 彩る植物を補植し、落ち着いた自然味ある庭 園へと変貌させている。庭園最上流部は巨岩・ 巨木・滝の音に包まれた神秘的な場所であり、 小涌園地区を見守る「箱根温泉神社」を再配置 して散策の終着点とした。ここからの俯瞰で はダイナミックな自然を背景に建築と庭園が 融合し、かつて点在した露天風呂跡地を大き な魅力のある庭園として復元している。
箱根小涌園 天悠
所在地 神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平 1297
発注者 藤田観光株式会社
主要用途 旅館
設計・監理 株式会社日本設計(外構:齋藤求、小泉萌、池田秀範 土木:渡邉良男、辻田拓也、建築:武田匡史、森豊)…