Landscape connecting history Tourism development proposal to maintain "Gunkanjima"
Text and Composition by Seiko Goto [Nagasaki University Department of Environmental Science, Professor]
世界文化遺産としての軍艦島
「軍艦島」として知られる長崎県長崎市にあ る端島は、明治時代から昭和時代にかけて海底 炭鉱によって栄えた島である。長崎港から南西 の海上約17.5kmに位置し、野母崎からは約 4.5km離れている(写真1)。軍艦島は日本の近 代化を支えてきた炭鉱の一つであったが、1974 年の閉山により無人島となった。2009 年から 観光客が上陸・見学できるようになると、2012 年にはジェームス・ボンド(007)が活躍する 映画「スカイフォール」の舞台としても世界に 注目され、2015 年、軍艦島の周囲を固める擁 壁と炭鉱関連の施設が世界文化遺産に登録さ れた(図1)。しかし常に強い潮風や波に晒され ている軍艦島の建造物は塩害による劣化が著 しく、急速に崩落が進み、いかに世界遺産とし て軍艦島の景観と歴史を維持するかが問われ ている(写真2)。この問いに対し、平成28 年度5 月に開催された長崎大学環境科学部主催 長崎まちなみワークショップでは、リンダ・ジュ エル教授をはじめ4 人のカリフォルニア大学 バークレイ校ランドスケープ学科の大学院生 と長崎大学の学生が共同で、世界遺産としての 軍艦島のランドスケープデザインを提案した。
日本の産業革命と軍艦島
軍艦島は旧鍋島藩深堀領主の所領であったが1890 年に三菱社へ10 万円で譲渡され、そ の後100 年以上にわたり三菱の私有地となる。 譲渡後、軍艦島の炭鉱の出炭量は高島炭鉱を 抜くまでに成長した。軍艦島は、島全体が護岸 堤防で覆われ、島の中央部に岩山が南北に走 り、その東側と南側には炭鉱関連の施設があ り、西側と北側および山頂に住宅など生活に関 する施設がある。1916 年には日本で最初の鉄 筋コンクリート造の集合住宅が建設された。人 口が最盛期を迎えた1960 年には、人口密度は 83,600人/km2と世界一を誇り東京特別区の9 倍以上に達した。炭鉱施設・住宅のほか様々な 施設があり、ほぼ完結した都市機能を有してい た(写真3)。
しかし、木造や鉄骨造で建設された建物は、 荒波に晒され続けた上に防水技術の問題や無 人化によって急速に劣化し、1 号棟(端島神社) の拝殿をはじめ完全に崩壊したものが多い。現 存する鉄筋コンクリート建造物も亀裂がひど く、崩落するのは時間の問題とみられるのも多 いが、現在は手付かずのまま放棄されている。 軍艦島としての島のシルエットを保つ上でも、 建物の補修が必須である(図2,3)。
アルカトラズ島と軍艦島
ワークショップでは、軍艦島のランドスケープデザインを考えるに当たり、類似の状況下に おける開発の成功例としてアルカトラズ島に 注目した。アルカトラズ島は、アメリカ合衆国 カリフォルニア州サンフランシスコ市から 2.4kmのところに浮かぶ、面積89,000m2 の小 島である(図4)。島はかつて灯台、軍事要塞、 そして監獄として使用され、1963 年に刑務所 が閉鎖された後、一時無人島となったが、1972 年に国立レクリエーション地域として指定さ れた。立地条件や大きさ、その歴史において、 軍艦島と類似した点が多い。現在、アルカトラ ズ島は歴史地区として、サンフランシスコの目 玉の観光地である。島では観光客は、英語の他8 か国語によるオーディオガイドによって見所 を巡回し、その歴史を学ぶことができる。島内 には立ち入りが禁止されている建物もあるが、 観光客の行動はオーディオガイドによってコ ントロールされている(写真4,5)。アルカトラ ズ島に訪れる年間上陸者数は1,400,000 人で、 観光事業による年間売り上げは100 億円に上 り、この収益によって島が維持管理されている。
これに対して現在の軍艦島の年間上陸者数 はアルカトラズ島の7 分の1(200,000 人)で ある。また、観光事業による年間売り上げはア ルカトラズ島の10 分の1(10 億円)で、この収 益では島を維持することはできない。建物の崩 落が進行する島で観光客の安全性を確保するこ とが難しく、結果的に軍艦島では観光客の数の 制限、または観光事業の廃止が議論されている。 しかし世界遺産となった軍艦島は、その歴史を 後世に伝える役目を担っているので、その姿が 維持されなくてはならない。それには、観光事業 によって島の維持費を賄うことが必要である。そ こでワークショップでは、アルカトラズ島の事例 を参考にしつつ、廃墟としての軍艦島の観光事 業を促すランドスケープデザインを提案した。
世界遺産としての 軍艦島のランドスケープデザイン
現在の軍艦島の観光ルートは、ドルフィン桟 橋から30 号棟付近までの狭い範囲に限られ、…